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バイオリンの魂柱が倒れてしまった時の対処法

バイオリンの胴体の断面

(断面の写真はWikipediaより引用)

バイオリンの駒の下には魂柱(英語ではSound post)と呼ばれる木の棒が立っています。

弓で弦をこすって音を出すとき、その振動は弦から、駒、表板、裏板へと伝わっていきます。この時に駒の振動、表板の振動を裏板に伝えるのが”魂柱”の役割です。

魂柱はまれにくっついているものと思われていることもありますが、表板と裏板の間に挟まっている状態です。

時にさまざまな要因で魂柱はゆるんだり、外れて倒れたりします。この記事ではその原因と注意点、対処方法についてお話します。

目次

魂柱が倒れる主な原因を知りましょう。

楽器と魂柱

魂柱が倒れる原因は主に3つです。
一つは楽器を演奏中に落としてしまう(チェロなどであれば倒してしまう)ことによる衝撃。二つ目は弦が切れるゆるむ、パーツがはずれる、駒が倒れるなどして魂柱への圧力が急激に弱まったときのはずみ。三つめは気温や湿度が変化したことによって楽器が膨張することなどです。
このような原因が起こると同時に別の楽器故障が発生することもあります。お客様自身がこのような変化に気づいたときには、どのような状況であったのかを把握していると適切な対処につなげることができます。
まずは落ち着いて楽器修理店へ連絡し、状況や状態を伝えましょう。技術的な心得がない限りは決してご自身で修理してしまわぬようにお願いいたします。

楽器を落としてしまった(ぶつけてしまった)場合の注意点

楽器落とした時

落としてしまった場合に魂柱が倒れてしまった場合は、それ以外に楽器の割れや、へこみ、はがれなどが起こる場合があります。
バイオリンの場合、弦を張ることによって駒や楽器にかかる圧力は約30キロほどです。内部の魂柱が倒れると表板への圧力を支えることができなくなり、板が割れるという事態が起こります。逆に板が衝撃で割れることによって魂柱が外れることもあります。
魂柱が倒れただけと安心せず、細かなチェックをしましょう。内部にヒビや剥がれがあると雑音の原因になります。

弦のゆるみ、パーツ外れ、駒がはずれたときの注意点

ペグイメージ

ペグが折れる・弦が切れるなどした場合には、駒は立っているけど魂柱だけが倒れてしまったということがあります。
魂柱は弦を張っていない(圧力のない)状態でたてますので、弦がゆるんだからといってそう簡単に倒れはしません。
この場合にはまず、魂柱自体の状態をチェックします。木製ですので年月の経過とともに魂柱は痩せてみじかくなり、緩みやすくなるのです。
テールピースが外れた場合も同様です。魂柱とともにエンドピンの状態もチェックしましょう。
駒が倒れた場合は要注意です。駒やテールピースは弦にひっぱられて表板に打ちつけられ、それを割ってしまうことがあります。

気温や湿度による楽器の変化

emmanmaさんによる写真ACからの写真

湿度や温度が高い時期、バイオリンの表板の木材は空気中の水分を吸収してふくらみます。
すると表板のアーチは外側に向かって膨らみます。表板と裏板は一緒に外側に膨らんでいくので、楽器の中の空間は広くなって魂柱はゆるんでいってしまうのです。
冬場は逆に湿度がとても低くなりますので、木は乾燥して小さくなります。
ペグなどの穴が広がって緩くなると、弦が緩んでしまったりして、先にお話ししたような魂柱の倒れが起こることがあります。
これらは自然発生的なものなので、完全に防ぐ方法はありません。なるべく涼しくて湿度の安定している場所で保管しましょう。
湿度調節材などを使用するのも一つの手です。

魂柱が倒れたときの対処法について

駒調整、布位置

駒は立っているけど、魂柱が倒れてしまっている場合
先述の通り、弦の圧力で表板が割れたり、変形してしまうことがあります。弦を緩めて駒を取り外す必要があります。
写真で示した①と②の位置にハンカチなどを挟んでいただき、弦を緩めます。この時のハンカチは駒やテールピースが楽器を傷つけないために挟んでいます。
駒も倒れてしまっている場合も同様に①の位置に布をはさみ、弦を緩めてください。
布をはさんでいれば弦やテールピースを完全に取り外す必要はありません。そのままの状態でお持ちください。
もし怖くて作業ができない場合にはそのままで大丈夫です。なるべく早めに修理にお持ち下さい(できれば1日~3日以内)

修理方法と修理価格について

魂柱立て

修理には”魂柱立て”という専門の道具を使用いたします。
魂柱を立て直すだけで、元の音と同じにはなりません。お客さま自身に弾いていただいて調整をする必要があります。
修理価格は以下の通りです。

立て直しのみ 500円 作業時間 10~15分ほど
調整 5000円 作業時間 15~30ほど
魂柱交換 6000円 作業時間 20~40分ほど

詳しくは以下のリンクをご覧ください。


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下川バイオリン工房

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【TEL】 080-1229-3446

【Mail】 s.shimokawa.1990@ymobile.ne.jp

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