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バイオリン製作に必要な道具と選び方・買い方について



皆様こんにちは!下川バイオリン工房です。

バイオリン製作は100以上の工程があるといわれ、そのところどころで必要な道具が変わってきます。木工の基礎がすべて詰まった作品であり、芸術品と言われる所以でもあると思います。

 

そんなバイオリン製作に必要な数多くの道具の中から必ずしも必要ではないとされるものや大型の電動工具を除いた”必須”とされるものについて解説します。

道具の使い方については話が長くなってしまうため紹介程度に留め、詳細は割愛します🙇

選び方や買い方については2023年11月現在の状況をもとにお話します。

 

項目は①切削工具 ②測定器具 ③専用工具(バイオリンにしか使用できないもの) ④補助器具

それでは基本となる切削工具からまいりましょう!

 

 

目次

【切削工具】

カンナ(漢字:鉋 英語:Planer)

バイオリン制作の基本となる道具の一つ”西洋かんな”です。
厚みだし、平面だし、削り、面取りなどあらゆる工程で使用します。
みなさんが想像するような和かんな(木製の平らな台に大きな刃が取付けられたもの)とは違い、鋳鉄製の台に刃とそれの出具合を調整するための機構を備えています。

和かんなと違う点は以下の通りです。
①引きではなく押して使用する。
②刃の調整が容易で部材によって細かく使い分けられる。
③台の裏をまっ平に加工し、刃角が鋭角で、刃口が狭く、ごく少量ずつ削ることが可能であるため、”木口”や非常に小さい木材などの和かんなでは削れない部分も削ることができる。

豆カンナ

名前の通り豆のようにちいさなカンナです。
大小さまざまな大きさがあり、用途に応じて使い分けます。大きなカンナと使用方法は同じですがこちらには台の底面が丸くなったものがあります。

バイオリンの各パーツの成形で使用されます。部材に押し当てて使用することで一定量で長い距離削ることができるため、ノミでは削りずらい曲面などの成形に向いています。

ノミ(漢字:鑿 英語:chisel)

バイオリン制作においてノミは荒彫りと呼ばれる木材の最初の加工に使用されます。
本来のノミは木材に穴や溝を彫るために使用する道具ですが、バイオリン制作においては削り(成形)や平面だしなど仕上げに近い作業にも使用されます。

ノミの種類を大別すると大工さんが使用するようなハンマーで叩く”叩きノミ”と手で突いて使用する”突きノミ”に分かれます。
バイオリン制作ではどちらを使用するという決まりはありません。使いやすさと用途に応じて適宜選択します。

※画像下が叩きノミです。ハンマーで叩いたときに柄が割れないための金属リング(かつら)がついているのが大きな特徴です。

平ノミ

刃が平らなノミです。
溝やほぞの作成に使用します。バイオリン制作においては内部ブロックや”ネックスクロール”などの成形などにも使用します。

日本のノミは”鍛接”と呼ばれる技法によって”軟鉄”と鋼(刃の部分)が合わさった構造をしています。これにより全体がしなやかで粘りのある状態となり、折れず・曲がらず・研ぎやすく・よく切れるものとなっています。
海外のノミはそれに対して全鋼と呼ばれる刃全体が鋼のものが主流となっています。薄く刃が長いものが多いので用途によって使いやすいです。またスイス製のノミなど鋼材の質がよいものであれば切れ味もあります。
自分にとって使いやすいほうを選択してください。

内丸ノミ

木材の表面に丸い溝を彫る際に自身から見て手前に鋼の部分見えているものを指します。
彫刻刀の丸刃のように表面をすくい取っていくような加工ができるため、溝や穴を掘っていくことが可能です。

バイオリン制作においては表・裏板のアーチを成形する場合やネックスクロールの成形などに使用します。

外丸ノミ

木材の表面に丸い溝を彫る際に自身から見て奥川に鋼の部分がくるものを指します。
まっすぐに仕上げられた刃(鋼)を部材に添わせるようにして使用します。丸くまっすぐな溝を彫ることができます。接着した部材同士の段差を削る場合やブロックの成形などに使用します。

バイオリン製作の際には内丸ノミ、外丸ノミは両方必要です。

ノミの幅について

ノミの大きさは刃の部分の横幅によって大きさを区別します。
日本に古くからある長さの単位である『分』約3mm、『寸』約3cm、『尺』約30cmなどです。

なので5分ノミといえば5×3mm=15mm(刃幅)となります。
当然ではありますが海外のノミはミリかインチとなります。

あったほうが良い種類としては
【平ノミ】6mm、12mm、15mm  さらに弓の毛替えもするならば3mm
【内丸ノミ】6mm、12mm
【外丸ノミ】6mm、12mm
※丸ノミの種類(丸み)は画像のようにいくつかあります。通常の丸と浅丸、深丸それぞれあると良いです。
また極浅丸はバイオリン修理の作業も行うのであればあったほうが良いです。

その他のノミについて

(画像はhttps://www.handsman.co.jp/diy-howto/chisel-type/より引用させていただきました。)

イスカ型のノミはあると便利です。”ペグボックス”の内部やネックのほぞを彫る際に役立ちます。
丸すくいは修理を行う場合には用意しましょう。
小刀については後述します。

ナイフ(漢字:小刀 英語:Knife)

ナイフは印付けや切り出し、削りなどほぼすべての工程で使用します。
必要なものはまず画像一番右の両刃ナイフです。ナイフに関しては鍛接でも全鋼でもどちらでもよいと考えています。幅が6mm、12mmの二本を用意しましょう。
柄がついてないものは自作して取付るのをお勧めします。やはり持ちやすいほうが力もコントロールしやすいです。

弓の革巻き交換修理などにも使える片刃のナイフが便利です。とにかく研ぎやすく切れ味があるために重宝します。※こちらは日本製のものが一般です。

駒の作成や表板のF孔を彫るために必要です。サイズや強度などの問題からおそらく全鋼のものがよいと思います。(ほとんど全鋼しかないかも・・・?)

ヤスリ(漢字:鑢  英語:File)

ヤスリは表面を削るために使用するほか、仕上げにも使用します。(鑿やカンナで削った後に表面をならす)
ヤスリには”番手”と呼ばれる目の細かさを表す基準があり、それによって用途が分けられます。

荒目(~#300) 粗い
中目(#300~400程度)    ↕
細目(#600~800程度)    ↕
油目(#1000~1200程度)  細かい

平ヤスリ

バイオリン製作には長さ150mmのヤスリがもっとも使いやすいです。コントラバスやチェロの製作をする場合には大きいものがあってもよいでしょう。
番手は荒目、中目、細目(サイメ)があればよいです。荒目はなくても作業できます。
ヤスリで仕上がりとすることはないため油目は必要ないです。(そもそも細かすぎて木くずがつまってしまいます)

手入れを行うために”真鍮ブラシ”を一本購入してください。

丸ヤスリ

丸ヤスリには半丸ヤスリと両丸ヤスリがあります。曲面の仕上げに使用します。
丸みはノミ同様いくつか種類がありますので標準的な丸と浅丸のものを用意しましょう。平ヤスリと違って番手の種類は中目と細目があれば十分です。

そのほかのヤスリ

左から棒ヤスリ3本、ポイントヤスリ、目立てヤスリ、弦溝ヤスリです。
棒ヤスリはチェロやコントラバスの弦の溝やF孔の丸い部分などを削るのに使用します。弦ごとに太さが違うためにいろいろなサイズが必要となります。
バイオリンは細すぎて精密ヤスリが必要となるために画像右の専用やすりを使用しています(バイオリン道具専門の通販でしか購入できません)

そのほかにあると良いヤスリもあります。
ポイントヤスリ → ”パフリング”の溝を整える。
目立てヤスリ  → 印をつけたり、棒ヤスリをかけるためのガイドの溝をつけたり
鬼目やすり(平)→ 木口などのノミなどでは削りづらい箇所をたくさん削りたいとき
単目やすり   → プラスチック(弓チップ)やナットなどのかたい部材(黒檀)を削る際に便利

スクレーパー(英語:scraper)

木材の表面を削って滑らかに仕上げるための道具です。
薄い鋼の板にスクレーパーシャープナー(表面を滑らかに研いだ金属の丸棒)という道具でフチに”返し”と呼ばれるバリのようなものをつけた道具です。

木材の表面をこするとこの返しにひっかかって削れます。刃物とヤスリの中間に使用することが多いです。

鋸”ノコギリ”(英語:saw)

木工の基本と呼べる道具の一つです。
木材の切断からほぞを作る際の刃入れ、ダボ切りなどバイオリン製作のあらゆる工程で使用します。
あると便利な道具の一つとしてバンドソー(電動工具)を紹介したいですが今回の記事では省略します。

両刃ノコギリ

(縦挽き、横挽きの参考画像はリンク先のページより引用いたしました。)
一般的にのこぎりと言われてイメージするものですがやはり万能なこの一本は持っておくべきでしょう。

両刃というのは縦挽きと横挽きが両側にそれぞれついている状態を指しています。
木材の繊維や年輪と同じ方向に刃を動かす場合には抵抗が少ないために三角形の出っ張りを縦に並べた”縦挽き”の鋸目を使用して木材を掻き出すような形で切ります。
それに対して繊維を分断する切り方の場合は抵抗が大きくなるために極小の切り出し刃を並べたような形の”横挽き”の鋸目を使用して繊維を切断していくような形で切ります。



導突ノコギリ

胴付もしくは銅突ともいいます。
精密な切断加工をする際に用いられるために”鋸刃(のこば)”はとても薄い。刃自体が折れ曲がってしまうのを防ぐために刃とは逆の”背”と呼ばれる部分に”背金”という補強を取付たものである。
部材を極力失うことなく精密に直線を切ることができるためにバイオリンの製作や修理には重宝される。切断力があまりないため両刃ノコギリと両方持っていることが好ましい。

写真一枚目は横挽きと縦挽きの中間のような刃の形状で極小さな突起が連続したピラニアと呼ばれるノコギリ。
写真二枚目は縦挽きの導突で”あさり”がない仕様の鋸である。

あさりとは刃を鋸刃の厚みよりも外側に出してある加工のことを指します。切削中に木材との間に隙間を作ってくれるために摩擦が少なくなって切り進めやすくなっている。あさりがない方が切断面はより細かくきれいになります。

精密ノコギリ

より細かい加工をおこなう専用のノコギリ
バイオリン修理の際にペグボックス回りやネック周りの狭い場所でカットしたい場合に用いる。
薄い刃は曲げた状態で切ったりすることも可能

製作には基本的に必要がなく、修理をする場合には持っておくべきサイズのノコギリです。

【補助器具】

罫引き

罫引き(けひき、けびき、けいひき)とは日本で伝統的に使用されている大工道具の一つです。
正確に平らに削った”定規板”に棹と刃を取付たものです。(写真は棹が木製ではなく棹と刃が金属で一体になっています)

定規板に材料を当てて表面に刃で傷をつけていく道具です。基準面から一定の幅で長い線を引くことができるため、ネックや横板、表裏板のフチなど決まった厚みや高さに整える部分が多いバイオリン製作においてはとても重宝します。

ディバイダー(英語:divider)

同じように使用できる道具としてディバイダー(デバイダー)があります。
本来は幅を測り取る(写し取る)道具なので測定器具に分類されます。

海外には罫引きがないため(同じようなものはもちろんあるが)このディバイダーの片方の足を部材に当てて、もう片方で線を引く方法を用いることがあります。
これもバイオリン製作の重要な道具の一つです。罫引きでは精密な幅を引くことは出来ないためネックスクロール、ペグボックス、フチ回り(パフリング)などの工程でこちらを使用します。

砥石(英語:whetstone)

木工作業の基本です。道具の仕立てなくして作業は出来ません。
砥ぎを練習しましょう!😌

一口に砥石といっても合成砥石と天然砥石が存在します。合成砥石は研磨粒子を樹脂で固めたものです。
水に漬けて吸水させてから使用するのが基本です。

砥石とともにトレーを購入しましょう。砥石の粒子は水に溶けないため水道に流し続けると詰まります。
トレーにためて燃えないゴミで処理しましょう。
水道に分離(濾過)装置をつけることも可能です。

荒砥石

普段の砥ぎには使用しません。
刃こぼれなどをおこした際にその修正に用います。
番手は240~400番くらいです。

中砥石

中目砥石ともいい番手は1000~2000番くらいです。粒子が少し大きな砥石です。
刃物を使用して摩耗し丸くなってしまった刃先を薄く削って平らにするのに使用します。

砥いだ時に刃先に”返し”と呼ばれるひっかかりができたら中砥石の作業は完了です。
これだけでは表面の傷が大きく切れ味が十分ではありません。

仕上げ砥石

画像の紫のものです。(色は商品によって異なります)
番手は5000~8000番くらい

中砥石で砥いだ後に大きな傷を取り、刃先を磨くための砥石です。
本来は刃物の種類や用途、鋼材によって番手を変えるのが基本ですが、めんどくさい人は6000番あたりを買っておけば間違いないです。

市販の合成砥石には最高で32000番まで存在します。

天然砥石

※写真はリンク先の『天然砥石卸販売 森平』のHPより引用させていただいております。

先に紹介した合成砥石に対して、鉱山で採掘される砥石を”天然砥石”と呼びます。
合成砥石の品質向上や砥石自体の需要が低下したことにより、天然砥石の採掘場の多くは閉鎖され手に入りにくく高価なものとなりました。

天然砥石には番手が存在しません。日本の天然砥石は砥粒(研磨成分)として石英(水晶)を含み、その量や大きさ、ほかの成分との含有率によって粗さが決まります。
また天然砥石よりも粒子が柔らかく、砥ぎの最中に砕けて細かくなっていくことで番手に相当する数値は上昇し、数倍~数十倍になります。

合成砥石とは違い刃物によって番手を変えることができない為、使用している刃物にあった砥石を見極めることが難しいですが、その分正しく使用することができれば切れ味が落ちにくく、さびにくい刃物を仕上げることが可能です。

天然砥石は堆積した石層を切り出したものであるため、合成砥石のように水に漬けるようなことをすると層の間に水が入り込み割れます。
そのため砥ぎ面ではない横や裏には漆塗料を塗って浸水を防ぎます。

ハンマー(英語:hammer)

バイオリン製作においてはハンマーはそれほど使用される道具ではありません。叩きノミを作業に使用しないためハンマーの出番は限定的です。
しかしほかの道具の調整に際しての使用やピンポイントで大きな力が必要な場面もあるため所有持っておくとよいでしょう。

ハンマー(大)

日本では金づち(玄翁とも)と呼びます。

製作にはほぼ使用しません。内型を外す際に使うかどうかといったところです。
修理に関しては治具作製(接着や矯正などの際にクランプを使用しやすくするための補助パーツ。楽器の形状に合わせて木で自作したものも含む)の際にくぎを使用するのであれば役に立ちます。

ある程度頭に重さがあり、柄の長いものが好ましいです。(遠心力を利用した方が力が変えやすく狙いもぶれにくいため)

ハンマー(小)

小さなハンマーです。
主に豆カンナの刃の出具合を調整する際に使用します。
またパフリングを埋め込む際にも一部使用します。

筆(英語:brush)

木工作業が主体ではありますが、バイオリン製作において筆は外せない重要な道具の一つです。
主にニカワ接着に使用する用よニスの塗装用、さらに修理を行う場合に限りクリーニング用が必要となります。

筆(ニカワ用)

※画像はリンク先『画材・額縁・文房具通販の世界堂』より引用させていただきました。

バイオリンの接着剤”膠(ニカワ)”を使用する際の筆です。
ニカワと水を混ぜたものを湯煎し木材に塗るため、どんな筆でも良いというわけではありません。

おススメは豚毛です。
毛質が硬く、耐久力があります。加熱や温水にも強く、毛先がけば立ったり切れたりすることが少ないのが特徴です。

冷えると固まるニカワの性質上、接着にかかる時間を短縮するため、細かい接着部位には細いものを使用し表・裏板のハギやネック・指板接着には大きな筆を使用しましょう。

筆(ニス用)

ニスはオイルニスとアルコールニスの二種類があり、溶剤が違うために同じ筆を使用するのは洗浄の手間から効率が悪いです。
オイルニスは粘度があるため、ある程度毛質が硬くても良いです。逆にアルコールニスは柔らかく、均一に素早く薄く塗りたいため、柔軟性としなやかさを持つものを選択しましょう。

塗装する部位はさまざまですのでそれに合わせた筆の選択が必要です。
➀スクロールやリタッチに使用す細筆
➁横板やネック、ペグボックスの塗装を行う30mm程度の幅の平筆
➂表・裏板を一度に大きく塗ることができる60mm程度の平筆

塗り方やニスの調合によって使いやすい筆は異なりますのでいろいろ試してみることをお勧めします。

筆(クリーニング用)

※写真はリンク先の『新京極 左り馬』より引用させていただきました。

板の割れやハガレの隙間に入ったほこりや油、ニスやニカワを除去するため、毛先に弾力性のある筆が適しています。
具体的には日本画に使われるイタチや化粧筆に使用される馬毛、ナイロンの毛も使用できます。

写真のぼかし筆と呼ばれる毛先の短いものがおすすめです。安く済ませる場合には歯ブラシでも代用できますが歯ブラシは研磨を目的としたものであるため選択や使用を誤ると木材を痛めてしまいます。

クランプ(英語:clamp)

接着に使用するクランプは用途に応じて様々なタイプのものが必要です。
修理に必要なものを含めると数が大幅に増えてしまうため、今回は製作に必要なものに限ってご紹介します。

Fクランプ

最も代表的なクランプ。その形状からF(エフ)クランプと呼ばれます。
軽量で片手で使いやすく大きな力をかけられることから、ブロック接着、横板接着、ネック・指板接着と様々工程で使用します。

より大きな力が欠けられる大型のものと小さいものを両方持っていると便利です。

なおクイッククランプというレバーを握るだけで閉められるタイプが存在しますが、使用感や挟む力、力のかかりかたの違いなどから別物と考えた方が良いです。

箱閉じクランプ

表板・裏板を横板に接着する工程を”箱閉じ”と呼んでいます。
バイオリンの形状に合わせた形のクランプをフチにかけて横板に接着するこのような道具を使用します。
バイオリンの4つのコーナーを境にアッパーバウツ、ミドルバウツ、ロウアーバウツの3区画に分け、左右合わせて6区画に対応した6個のクランプからなります。
広い面積を一度に挟めるために一か所に過度の負担がかかるのを防ぎ、かつ作業を素早く行えます。

他にも楽器を左右二つに分けてたった二つのクランプで締めるものや、全体を一度に抑える金属プレートのようなものも存在します。

画像二枚目の青、赤、黄色のクランプはアセンブリークランプと呼びます。
一周分あるので箱閉じは可能ですが、基本的には修理に使う道具です。細かく挟んでいけるため、横板を矯正しながら接着したい楽器やニカワを慎重に入れながら接着していきたい場合に使います。

ライニングクランプ(エッジクランプ)

※写真はリンク先『篠崎バイオリン工房』より引用させていただきました。

バイオリンの横板を補強し、表板の接着面積を広げるために取付られる”ライニング”を接着するためのクランプです。
修理の場面では役に立つ道具ですが製作に関してはこれ以外に用途がありません。

ワイヤーのリングの弾性を利用して挟むものや、木の板に切れ込みを入れて挟む方法、洗濯ばさみを使用することでも接着可能です。

播金

木材を年輪と並行する面でカットし、その面同士を接合する方法を”接ぎ(ハギ)”と言います。
表板・裏板のハギ接着の際に使用するのがこのハタ金です。

40cm程度のものが5~6個程度必要となります。

バスバークランプ

表板の裏側に接着し、アーチ強度の補強と振動の伝達を補助するパーツ”バスバー”の接着に必要な道具です。

いわゆるCクランプの仲間ではありますが、まちが深いのが特徴です。

【測定器具】

キャリパー(英語:caliper)

表板や裏板を作成する際に裏側を削り厚みを調整します。
曲面であるために専用の器具を使用しなければ厚みを測ることは出来ません。

このキャリパーは0.1mmまでの精度で精確に厚みを測定可能です。

ノギス(英語:caliper)

厚みや幅を測るための器具です。アナログ式のものとデジタル式があります(デジタルは0.01mmまで測定可能)
キャリパーとの違いは材料を挟む爪の部分自体に目盛りがついているためキャリパーよりも精確です。

また幅の広いものでも精確に計測でき、リング状の材料の外径や内径、穴内部の深さなども測定ができます。精確な寸法でバイオリンを製作する場合には必須の道具です。

ストレートエッジ(英語:straight edge)

ストレートエッジは非常に精確に直線が作られた金属の棒です。誤差0.001mmほどの限りなくまっすぐな面を木材に当てることで木材表面を平面に削ることができているかをチェックします。
精密機器であるため、落としたりものをぶつけたりするのは厳禁です。

色々なタイプがありますが、こちらはナイフエッジ型と呼ばれるものです。

スコヤ(英語:skoya)

直角測定や寸法測定に使用する道具です。勘違いしやすいですが直線を測る道具ではない為、先にあげたストレートエッジのような使い方は出来ません。

台付きスコヤ

直角を測るための道具です。
見た目の通りに木材の角にスコヤを当てて、部材とのすきまや透過する光の様子から直角になっているかどうかを判断します。

バイオリン製作ではブロック製作に使用します。

自由スコヤ

※写真はリンク先『シンワ測定株式会社』より引用させていただきました。

ねじでつながった二枚の金属板を自由に動かして角度を調整できる器具です。
自由スコヤは角度を測るための道具ではありません。部材の角度を写し取り、別の部材に同じ角度を転写するための道具です。

バイオリン製作ではネックの削りなどに使用します。

プロトラクター(英語:pro tractor)

角度を測るための道具です。0度から180度まで計測が可能です。仕様上、木材のある一面に対して自由な角度で線を精確に引くことができるため、立体物に対しては分度器よりも使いやすいです。

バイオリン製作ではネック入れの際にしか出番がありません。

メジャー(英語:tape measure)

製作においてはごく一部の工程でしか使用しませんが、調整や修理では重宝します。
ネック・ボディー長、ストップ位置(駒位置)、弦長などが測定できます。

ものさし(英語:scale)

物差し(スケール)は部材の長さを測るための道具です。おそらくバイオリン製作でもっとも多く使用する道具の一つと言えます。
長さはいろいろありますが、15cmと30cmを用意しましょう。

あまり関係ないですがたまに定規という言い方をする場合がありますが、定規は直線を引いたり切ったりするものですので、厳密には物差しとは違います。
しかし、両方の機能を兼ねているものが多いため意味が伝わればよいとは思います😅

定盤(英語:surface plate)

※写真はリンク先『大西測定』より引用させていただきました。

定盤とは材料加工において理想平面を提供するものです。簡単に説明すると定盤自体がものすごい精度で平らに仕上げられており(平面を保っている)、上に乗せたものが同様に平面であるか、もしくは平面上に接地しているかを確かめることができます。

バイオリン製作で横板およびブロックと表・裏板がきれいな平面同士で接着されているか、それぞれの材料にねじれやゆがみが生じて不必要な負荷がかかっていないかが音の振動に大きくかかわってきます。
それを防ぐために定盤を使用してなるべく歪みが出ないように組み立てていくのです。

定盤には石定盤、鋳鉄定盤、ガラス定盤などがあります。用途は同じなのでお好きなものを使用してください。

【専用器具】

内型(英語:mold)

バイオリンの製作工程ではブロック⇒横板⇒裏板⇒表板⇒ネックの順番に組み立てていきます。
製作初期の段階でブロックを何もないところに置き横板を接着していくことは難しく、また形が崩れてしまう恐れがあります。
そのため、あらかじめ理想のバイオリンの形に作製した型を用意し、そこにパーツを取り付けて組み立てていくこととなります。

型には内型・外型とあります(写真は内型です)
製作の手軽さや組み立ての速さなどの理由から量産向きとされている外型(横板の外側を囲むように型を設置する方式)
精度が高く型崩れしにくいことから個人製作向きといわれている内型に分かれます。

型には上下とくびれ部分(C字コーナー)4か所にくぼみがあり、ここにブロックを接着して保持します。
最終的にブロックと横板を残して型を外し、バイオリンの胴内部は中空の状態となります。

材質に決まりはなく、合板や集成材、最近ではMDF(木質ボード)なども使用されます。単板は歪みが出やすいことからあまり推奨されません。

テンプレート(英語:template)

バイオリンの内型とセットで使用されるものです。
内型と全く同じ形で切り抜かれているのですが、コーナーの部分は尖っています。この部分はブロックを削る際の形を示しています。
内型にブロックを接着した後、テンプレートを当て線を引きます。

材質は樹脂やアクリル、金属板、木合板などです。

魂柱立て(英語:soundpost setter)

バイオリン製作後に内部に魂柱を立てるために使用する器具です。
魂柱を入れられる場所はF孔のみとなるため細く曲がった器具を用いて魂柱を内部に挟むようにして立てます。
魂柱立ての両端には魂柱を刺して持つために尖った部分と魂柱を立てた後に位置を調整するための引っかかりがついている部分とがあります。

分数バイオリン用、チェロ用、コントラバス用などもあります。
また魂柱を挟んで保持する”魂柱ばさみ”という道具もあります。

魂柱レトリーバー(英語:soundpost retriever)

魂柱を楽器内部から取り出すための器具です。
先端の二枚の金属板で魂柱を挟むようにして取り出します。

簡単な器具ですが非常に重要で、倒れた魂柱をおみくじのように振って出すことも可能ですが時間がかかります。
針で刺してとるのも難しいためこちらを用意するのが無難です。(銅板などで自作することも可能です)

ペグリーマー(英語:peg reamer)

ペグの穴を削るための器具です。
バイオリンのペグにはテーパーと呼ばれる角度がついています(根本から先に向かって細くなっていく円錐状であること)
そのためドリルなどで穴を作ることは出来ず、リーマーと呼ばれる専用器具が必要となります。

1:25テーパーとは25mmの長さに対して1mm幅が変化する角度のことを指し、かつてはこれが一般的なものでした。
このテーパーはペグが穴にめり込んでいきにくく回しやすい反面、弦のテンションに対しては固定するのに力が必要であるため、現在は1:30が主流となりました。

ペグリーマーには切削力が強く、方向を調整しやすいストレートタイプ(刃がまっすぐついている)
安定して削ることができ、切削面をなめらかに仕上げることができるスパイラル(刃が螺旋状についている)があります。

ペグシェーパー(英語:peg shaper)

ペグ穴と同様にペグにもテーパーがついている為、ナイフやカンナを用いて手作業で削ることは難しいです。(三味線などは手で削るようなのですが)
通常はペグシェーパーと呼ばれる鉛筆削りの大きい版みたいなものを使用して手回しで削っていきます。

写真一枚目はクラシカルなペグシェーパーです。削るための穴が4つあり、それぞれ太さが違います。(大きい穴からおよそ9.2mm、8.7mm、8.3mm、7.8mm)
バイオリンのペグの太さは棒の部分の一番太いところ(棒と取っ手の部分の間の飾り(カラーと呼んでいます)の手前)で7.5mmくらいですが、長年使用や調整で穴が広がったり、材質によっては太く作ったりしているため、削れる太さにも幅を持たせています。

写真二枚目は可動式のペグシェーパーです。
ねじ調整によって自由にテーパーや太さを変えて削ることが可能です。これ一台でどんな楽器にも対応できるため便利です。

ベンディングアイロン(英語:bending iron)

横板を曲げるためのアイロンです。
内部にヒーターが入っていて150~250度ほどに加熱されます。
横板を押し当てながら形を変えていきます。

熱した鉄ごて可能ですが設備や手間を考えればこちらを購入した方が良いです。

写真の物はバイオリンのC字をイメージした形となっておりますが、丸形や卵型、楕円型などいろいろなものがあります。

その他(絶対に必要ではないがあったほうが作業がはかどるもの)

指板削り台

指板を削るための台です。
指板の表面は丸く削る必要があり、全体に均一に反りを付けるなどの必要もあります。演奏性に大きく係るために精密に削る必要があるため安定した状態で削りたいです。
楽器に接着した状態で削ることも可能ですが、楽器との接触事故や作業性を考えると単体で削ったほうが良いです。

指板の表側・裏側それぞれをセットできるように台にも裏表に加工を施します。なるべくしっかりとした厚みと硬さのある木材を使用しましょう。

横板削り台

横板を削るための台です。
横板は厚みが1.2mm~2.0mm(削る前の状態)ほどしかなく、手にもって削ることは出来ません。
また薄すぎてカンナ台に引っ掛けて削るのも難しい為、このように上から一部を押さえて手前からカンナをかけていく台が便利です。※ウナギを捌くみたいな状態です。

なるべく固く平らな板材を使用しましょう。表板や裏板のハギ面を削る際にも使用可能です。

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