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バイオリンの『弦』とは?種類や構造について



みなさんこんにちわ!下川バイオリン工房です。

バイオリンは、その優美な音色や表現力の高さから、古今東西で愛され続けている楽器です。その音色の魅力を引き出すためには、楽器本体の作りや調整などが重要となりますが、弦の選び方も非常に重要となってきます。今回はそんなバイオリン弦の種類や構造について詳しく見ていきたいと思います。(弦の商品を紹介する記事ではありません)

まず、一般的なバイオリン弦には、スチール弦、ナイロン弦、ガット弦などがあります。それぞれの弦には、異なる特徴やメリット、デメリットがあります。

目次

バイオリン弦の種類(素材ごと)

ガット弦 Gut strings

ガット弦は、羊の腸から作られており、非常に柔らかい音色を持っており、響きが他の素材の弦に比べて豊かです。より充実した倍音を得ることができます。そのため、特に古楽器やバロック音楽の演奏に適しているとされています。
耐久性が他の弦に比べて劣るため、頻繁に弦を交換する必要があります。また、湿度や温度の変化に弱く伸びやすいためにチューニングが安定しづらいというデメリットもあります。(およそ3カ月から半年)
弦を響かせる(ひっかかりや振動させる)ことが難しく、高いボーイングの技術を必要とするため上級者向けの弦と言えます。

伝統的な”プレーンガット(通称”裸ガット)”と呼ばれる腸をより合わせただけのむき出しの弦と
周りにシルバーを巻いて弾きやすさと耐久性を向上させたもの”銀巻ガット弦(シルバーワウンド)”があります。

スチール弦 Steel strings

スチール弦は、その名の通り、スチール製の弦です。
非常に耐久性があり、長持ちするという特徴があります。また、高音域での音の反応が良く、明瞭(クリア)な音色を奏でることができます。
一方で、音の豊かさや表現力にはやや欠けると言われています。
切れにくくチューニングはしやすい為、そういった部分では初心者におすすめと言えます。

質量があるため弦の径は細くなっており、やや抑える指や駒・ナットなどのパーツに食い込みやすい傾向があります。

ナイロン弦 Nylon strings

素材がナイロン製であるため、非常に柔らかく優しく豊かな響きを持ち、指滑りも良いという特徴があります。そのため、演奏者自身が弦をコントロールしやすく、表現力が豊かになります。初心者でも使いやすくおすすめです。

高音域での音の反応がやや悪く、明瞭さに欠けるというデメリットもあります。また素材の特性上、太い弦ほど音がぼやけやすいです。
ガット弦と同様に湿度や温度によって伸縮はしますが、チューニングはある程度安定するためそれほど気にする必要はありません。

現在、バイオリン弦としてはナイロンが主流となっており、様々な特徴の商品が開発されています。

バイオリン弦の歴史

バイオリンは、クラシック音楽の中で最も人気のある楽器の一つです。その美しい音色や独特の演奏技術により、数世紀にわたり多くの音楽家や聴衆を魅了してきました。そして、バイオリンの音色を作り出す重要な要素の一つが弦です。

バイオリンの弦は、最初期の楽器開発の段階から存在していましたが、その形状や素材は現在のものとは異なっていました。最初のバイオリン弦は、動物の腸や絹糸で作られていました。これらの素材は手に入りやすく、また音色も比較的豊かであったため、当時においてはよく使用されていました。

しかし、18世紀の中ごろになると、ガット弦(動物の腸から作られた弦)の代わりに鋼弦が使用されるようになりました。鋼弦は、より明瞭な音色や持続力をもたらし、バイオリンの演奏技術の進歩に大いに寄与しました。また、鋼弦はより耐久性に富んでおり、劣化が少ないため、長期に渡って使用できるという利点もありました。

20世紀に入ると、バイオリニストがより多様な音色を求めるようになり、弦メーカーは様々な素材や製法を試みるようになりました。これにより、ガット弦や鋼弦だけでなく、合成材料や金属製の弦も登場しました。これらの新しい素材によって、楽器の表現力や音色の幅が一層広がりました。

そして、現在では、バイオリン弦の市場には数多くのメーカーやブランドが存在しており、演奏者は自分の好みや演奏スタイルに合わせた弦を選ぶことができます。弦の素材や加工方法、張り具合など、さまざまな要素が音色や演奏感に影響を与えるため、適切な弦を選ぶことは非常に重要です。

バイオリン弦の進化は、楽器の技術と演奏の進歩と密接に関連しています。弦の品質や音色が向上したことにより、より高い音楽の表現が可能になり、バイオリンの演奏技術も飛躍的に発展してきました。今後も、バイオリン弦の研究と開発は続けられるでしょう。新たな素材や製法の探求が、音楽界に新たな可能性をもたらすことでしょう。

バイオリンの音色や奏法は、時代とともに変化してきましたが、弦はその中で一貫して重要な役割を果たしてきました。バイオリン弦の歴史を紐解くことで、楽器の進化と音楽の変遷を理解し、より深く音楽を楽しむことができるでしょう。

バイオリン弦の作り方

ガット弦の作り方

ガット弦(羊腸弦)よく洗浄して細く裂いた羊の腸(ストランド)を複数本束ねて乾燥させながら徐々に徐々に撚り(より)※ねじりをかけて作製します。どの後に表面を研磨して仕上げます。ソーセージ用の羊腸(天然のケーシング)から作ることができ、手作りも可能ですが、強度を出すためには強い引っ張りでのよりの技術と乾燥・研磨の技術が必要です。

【具体的な方法】
腸は当然すぐに腐ってしまいますので、内部の脂肪や不純物を取り除くために塩をはらって水洗いすることで脱脂、脱水、殺菌を行います。
専用の治具(カッター)を使い、羊腸を細く切り裂いてストランド(細ひも)にする。※一本の腸では太さが均一にならないため、細く裂いて複数本まとめます。

束ねた状態で専用の器具(ハンドドリルなどを利用)を用いて均一によっていきます。
弦の太さ(ゲージ)に合わせて本数を調整する。バイオリンG線のように低音になるほど弦は太く(質量大きく)、A線のように高音になるほど細く(質量小さく)する必要があります。(反時計方向に回転させると、耐久性が向上しやすい)

ピンと張った状態で乾燥させ、乾燥後に表面を紙やすり等で研磨して滑らかにします。
表面にニスやオイルを塗布して乾燥させ、耐久性を高めます。

≪画像は”How to make gut strings (whole movie) ガット弦製作記”という動画から切り抜かせていただきました。動画リンクは下部にあります。YOUTUBEの動画であるためリンク切れに関してはご容赦ください≫

スチール弦の作り方

スチール弦(金属弦)は、芯線に巻き線と呼ばれる金属細線が巻かれた状態の弦を意味します。

【具体的な製造方法】
強度と耐久性のある高炭素鋼(スチール)ワイヤーを芯線として使用します。
芯線に金属(ニッケル、ステンレス、銀メッキ銅など)の細線を精密に巻き付けます。材質によって硬度や比重などが違うためそれが音色の違いとなって現れます。
専用の機械で均一な張力を保ちながら、巻線を芯線に沿って巻き上げます。その後、音色を保つために、巻き線にメッキやコーティングが施されて仕上がりとなります。
強度が他のどの素材よりも高い反面、錆びやすいために長持ちさせるためには日ごろから演奏後に手脂や汗を拭きとるメンテナンスが必要です。

ナイロン弦の細かい作りの違いについて

一般的に皆さんからナイロン弦と呼ばれる合成繊維を芯材に使用した商品です。
ナイロンとは樹脂で作られた特定の合成繊維を指します。バイオリン弦すべてがナイロンで出来ているわけではない為、トマスティーク社などでは”シンセティックコア(合成コア)”と表記されます。

【芯材(コア)の種類の違い】
合成繊維にもナイロンを始め、ペルロンやポリエステル・高性能ポリマーなど様々な素材があります。それによって弾き心地と音の芯が変わります。
コンポジットファイバー(複合繊維)と呼ばれる二種類以上の違い性質を持つ合成繊維を組み合わせたものもあります。
【芯材の構造の違い】
モノフィラメント: 芯が1本の硬めのナイロン。反応が速く、スチール弦に近い明瞭な音色。
マルチフィラメント: 多数の細かいナイロン繊維を束ねたもの。柔軟性があり、ガット弦のような温かみと複雑な倍音を持つ。

【巻き線(ワインディング)の素材と加工】
ナイロン芯の上に巻かれる金属線が、音色の輝かしさを決定します。
アルミニウム: 軽量で振動しやすく、優しい明るい音色になる。D線、A線によく使われる。
シルバー(銀): アルミニウムより密度が高く、重量があるため、深みや重厚感、音の芯がしっかり出る(純銀ほど音が濃密になる)。G・D線に使われることが多い
チタン・合金: アルミニウムとシルバーの中間、またはそれ以上に明るく、パワフルな音色にする場合に用いる。

【E線の仕様】
E線は金属単線が基本だが、ナイロン弦の音色と調和するようにいろいろな工夫がされています。
金メッキ(ゴールドメッキ): 輪郭がはっきりしつつも、キンキンしない暖かみのある音。
銀メッキ: 音の立ち上がりが速く、クリアな音色。
プラチナメッキ: 非常にパワーがあり、輝かしい音色。

【テンション(張力)とゲージ(太さ)】
Light/Weich(ライト): テンションが弱く、柔らかい押し心地。音は少し細く、反応が繊細。
Medium/Mitt (ミディアム): 標準
Heavy/Stark/Forte (ヘビー): テンションが強く、押し心地が硬い。音が太く音量は出るが鳴らすには力がいります。

おわりに

バイオリン弦の種類には、それぞれの特徴やメリット、デメリットがあります。演奏者自身の好みや演奏する曲のジャンルに応じて、適切な弦を選ぶことが重要です。

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