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バイオリンを参考に駒(ブリッジ)の構造や仕組み、交換方法について知ろう

駒 イメージ

駒は初めて楽器を手にしたとき、おそらく大半の方は当たり前のように立っている状態のものを見ます。大事なパーツだとわかっていても、日々の変化に気づいていたとしても、専門店な分野になってしまうために深く関心を持つことは難しいと思います。

この記事ではバイオリン、ビオラ、チェロ、コントラバスにおいて弦の振動を効率よく本体に伝える役割をもつ駒(英語ではブリッジ)について解説していきます。わかりやすい記事となるように頑張って書いたので一読いただけたら幸いです。

駒の仕組みや構造についてより深い知識をもつことでより細かい調整が可能となります。私は職人と演奏者がより密接にかかわりながら楽器について考えていけることを望みます。

 

目次

駒ってどんなもの?素材は?形状は?

写真は未加工の駒の表と裏です。
マークが入っているのが見えますね。これはメーカーのブランドマークで写真はオーベルト(Aubert)社のDE LUXEという最高ランクのものです。ほかにもデスピオ(Despiau)やドイツのミロシタン(Milo Stamm)などがあります。
マークのある方が表という決まりはありません。木材の組織の方向によって決まります。(のちほど解説いたします)

素材はメープル(楓)で作られます。木目が詰まっていて均一に並んでいる。組織にうねりがなく均質であることが良材の条件です。また材質が硬すぎないことも大事な要素です。
以前、黒檀で作られた駒を見たことがありますが、とても雑味のある硬質な音が出ていました。

駒の役割について

駒 弦 振動変換

駒には弦の振動を変換して効率よく本体に伝える役割があります。弦というものは発音機構として音程が乱れにくく、微妙なニュアンスを表現しやすいのが特徴ですが、空気中を振動が伝わりにくいためにこうして駒を介して本体に振動を伝え音を増幅する必要があるのです。

弦を弓でこすったとき横に振動します。駒の内部を振動が伝わる過程で振動の方向が縦に変換されます。表板は縦に振動するためこの変換の工程が非常に大切になります。

駒はなぜこんな特徴ある形をしているのだろうと思う方もいると思いますがこれが理由なんですね。

駒を交換する方法(実際の作業風景にて)

駒の放射組織を見る

写真の赤丸で囲ってある部分、これを『放射組織』もしくは『髄線』といいます。
木材の水分や養分を運ぶ組織です。木の成長方向に対して直角に走っています(つまり年輪に直角)

写真のようにこれが長く見えているということは材料がきれいに組織に対して平行にカットされているということでうねりがない証拠でもあります。
逆側はななめにカットされているため、点々となって見えます。

この面を指板側を表としたときに裏側にします。(演奏するときに自分から見える面)

駒の前加工

駒の裏側が平らになっているか”ストレートエッジ”という道具で確認します。
必要なら西洋がんな(ブロックプレーン)を使って削ります。

表板を同様にかんなをつかって削ります。バイオリンの場合、足の部分で厚みが4.5mm~4.7mmくらいにします。

仮線を引く

仕上がりの形状を予想するために仮線を引きます。
駒を表板の上に置き、鉛筆で1番線、4番線の位置にしるしをうちます。
鉛筆が直径7mmの場合はその半分の3.5mmが指板からしるしまでの距離です。

最終的な弦の高さは4番線で5mm、1番線で3.5mmを目指しています。そのため4番線は3.5mm+1.5mm+余分1.5mmの位置に点、1番線は3.5mm+余分1.5mmの位置に点を書き、あらかじめ用意しているテンプレートで点と点をつなぐアーチを描きます。

足の裏を表板のアーチに合わせていく

上の感じが決まったら、足をどれくらい削ればいいのかが決まります。
ノミで少しずつ削っていきます。

楽器に対して裏面が直角に立っているのが理想です。音が楽器にきれいに伝わっていくにはその方がいいです。
(写真は少し前のめりに傾いているので直していきます)

弦の高さの決定と厚みの調整

足がきれいに合うようになったら全体の厚みを整えていきます。
裏面は触らずに平らなままで表面を削っていきます。弦が乗る部分の厚みは1.2mm~1.5mmほどです。表面は正確には真っ平ではなくわずかに丸みを帯びています。

その後、専用のやすりを使って弦のみぞを削ります。弦同士の幅は職人によってばらばらですが、ある程度弾きやすい幅というのは決まっています。

仕上げ加工

先端の細いナイフを使って駒のデザイン(くりぬきの部分)を削って整えていきます。
最も職人の腕が試されるところです。
ラインがきれいにつながっていて、全体的に上品にまとまったデザインを目指しています。

駒の各部分の幅や厚みは音に大きく影響します。駒の形状と音との関係性は非常に複雑で単純にどこを削ればどうなるというものではないので、経験と音を見ながら削っていきます。

個人的には足付近は音の立ち上がり、弦付近は音の硬さや響きなどに影響が強い傾向にあると思っています。

駒の取り扱いについて

駒は楽器ごとに位置を調節して決めています。
弦長と楽器内部の魂柱との位置関係が大事になってきます。もし駒が前後や横にずれていたり、斜めっていたりしている状態に気が付いたら早めに専門店に持ち込みましょう。
音が悪いまま使うことが演奏上達の妨げになりますし、駒の足が変形したりするのでよくないです。

また日頃調弦を行っていると、駒がどんどん前に傾いてきます。駒が曲がってしまうと音の伝達がとても悪くなってしまいますので、要注意です。
テールピースの下に布を挟んで、駒の両端をしっかりと持ち手前に引くことで治すことができます。不安な場合は経験者に頼るか専門店に持ち込むのがよいでしょう。

最後に

駒はその楽器一台一台に合わせて製作します。買ってきてパッと交換したり、ほかの駒付け替えたりできないものです。
駒を長く使っていると楽器に馴染んでくると僕は考えています。取り扱い方法を学んで大事に使ってあげましょう。

駒の原理などを知ることでもっと音がよくなるように調整方法を研究してみるのも面白いと思います。

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