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膠(ニカワ)にもいろんな種類がある【バイオリンの接着剤】



今回の記事はバイオリンすべてのパーツをつなぐ接着材『膠(ニカワ)』の種類についてのお話です。

「そもそもニカワって何なんだ?」と思われている方はこちらの記事をご覧ください。

↓↓↓【バイオリン修理に使う【膠(ニカワ)】ってなんだろう。】


https://shimokawa-violin.tokyo/2021/09/21/whatisglue/


 

広辞苑によると「にかわ(膠)は、獣類の骨・皮・腱などを水で煮た液を乾かし、固めた物質。ゼラチンを主成分とし、透明または半透明で弾性に富み、主として物を接着させるに用いる。」とあります。

獣類とかいてある通り特定の動物ではなく複数の生き物(獣でないものも含む)からニカワは製造可能です。主としてものを接着させるとあるとおり、接着以外にもさまざまな用途がありそれによって種類を使い分けるのです。

それでは本題にまいりましょう!

 

目次

材料の違い

獣膠

牛膠

日本では最も一般的なニカワである。
耐久性が高く腐敗しにくい。また接着力も強く(精製度合などで変わるが)風合いがでる。

乾燥するとある程度の耐水性を示すためにバイオリンなどの楽器の接着に向いている。汚れや衝撃、汗や湿気などにも強いためである。
とは言ってもニカワなのでお湯に溶かして除去することができ、再接着による修理を可能としている。

鹿膠

日本でかつて最も多く使用されていたのが鹿ニカワである。
使用感としては牛とあまり大きくは変わらない。

日本で主に流通しているニカワは三千本膠、鹿膠、パール膠(粒ニカワ)、板膠であるがブログトップ画像のサイコロ上のニカワはかつての名残から牛であっても”鹿膠”の名称となっている。

バイオリンに使用されるのは基本的に粒ニカワである。

豚皮膠(勾玉膠こうぎょくこう)

柔軟性と高い耐久性、優れた接着力があるニカワ
主に金箔や彩色に使用される。また紙や布などにも使用できる。

伸びもあり使用感の良いニカワではあるが、バイオリン製作においてはあまり使用されない。

兎膠(うさぎ)

海外で主に使用されているニカワ
粘度が高く油分が多いため、ある程度の接着力がありながら柔軟性があり、テンペラ画においてこれを固着剤として使用する絵具を使用することがある。

品質は良いが日本で一般的に流通していなく牛ニカワに対して価格が高いために、日本のバイオリン製作で使用されることはほぼない。

魚膠(ぎょこう)

サメなどの皮、骨、ヒレなどを使用してつくられるニカワ

水に溶けやすく、下塗りや木材の目留め、彩色などに使用される。
食品のゼリーなどに使う場合もある。

水ニカワと呼ばれる液体状で販売されているニカワは基本的にこれである。
耐水性が低く、柔軟性がないためにバイオリン製作には基本使用できないが、ナット接着や駒皮、ラベルの貼り付けなどの強度を必要としない作業には便利である。

米膠(べいこう)

柔軟性があり、柔らかい。
また保水性があるために絵具の乾燥を遅らせるなどに用いる。

強度がないためバイオリンには使用できない。

形状の違い(日本国内でのニカワの種類について)

ここでの形状とは日本国内でのニカワが販売される際の種類であり、材料はすべて牛(もしくは鹿)である。
前述の材料それぞれに形状の種類があるわけではないためご注意ください。

三千本膠

(画像はリンク先より引用させていただいております)
三千本という名称は一貫目(約3.75kg)の膠液から膠が三千本造られることからそのように名づけられました。

一本がおよそ10g
接着力は粒ニカワや鹿膠より弱いですが、穏やかに効きます。

膠すべてに共通しますが、水に十分浸漬させて芯までふやかしてから湯煎で溶かします。
不純物が多いため、布などで濾します。

板膠

(画像はリンク先より引用させていただいております)
接着力が高く、透明度の高いニカワ

鹿膠

前述のとおり鹿膠ですが原料は鹿ではありません。牛です。
他の膠より接着力が強いのが特徴で、混ぜて使用することもできる。

パール膠/粒膠

不純物が少なく、接着力が高く、固まりやすいのが特徴です。
粒状であるために膨潤の時間が短く手軽に使用しやすいニカワです。

防腐剤が含まれているとも言われています。
バイオリン製作に最も使用されるニカワです。濃度によって接着力に大きな差が出るため、接着部位によって最適な濃さに調整する技術が必要です。

膠(ニカワ)の製造方法

作業工程についてはこちらのリンクを参考とさせていただきました。

下処理

【皮の処理】
皮に脱毛処理をし、細かく裁断します。乾燥している皮の場合には水につけてふやかします。
 ↓
5~10cm角に細かく裁断します。
 ↓
水酸化カルシウム液を満たした槽に長期間漬けます(石灰漬け)
 ↓
酸で中和・水洗します。

【骨の下処理】
1cm以下に砕く
 ↓
酸を満たした槽に漬けリン酸カルシウムを溶解除去
 ↓
得られたタンパク質(「オセイン」と呼ばれる)を石灰漬けする

※この工程は古くから変わらず、昔は石灰漬けをしたのち、水洗いを行い鍋で似て天日干しをしていたそうです。

抽出

下処理した原料を70~100度のお湯に漬け込み、ニカワを抽出します。

濃縮

抽出されたにかわ液はろ過
 ↓
水を蒸発させて約50%に濃縮します。

冷却乾燥

濃縮したニカワ液を冷却してゲル化
 ↓
ところてんのように棒状か板状に押し出します。
 ↓
金網にのせて乾燥させます。
 ↓
かたまったものを粉砕して粒膠となります。

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