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バイオリンのニスが溶けた!?様々な要因と対処方法について

ニス 溶ける イメージ

バイオリンのニスには大きく分けてアルコールニスとオイルニスの2種類があります。天然の樹脂をアルコールもしくは油のどちらに溶かして塗っているかによって分かれています。

バイオリンのニスは環境の条件や化学反応によって溶けたりすることがあります。みなさんが楽器を保管する際に注意するべき点についてご説明します。

またニスが溶けてしまったり、跡がついてしまった方のためにその修復方法についても触れていきたいと思います。

目次

ニスの構造について

ニスの構造

ニスの基本構造はこのようになっています。木材にニスがしみ込んでしまうのを防ぐために下地材を塗っています。
その上にニスを何層にも塗り重ねることで楽器を保護しています。

塗り重ねる理由は一層では厚みが足りず、耐久性にすぐれないため、音響的な理由、また一度に厚く塗ってしまうと表面と内側とで乾くのに差が出てしまいひび割れなどの原因となってしまうためです。

製作者によってはこれ以外のものが層の間に塗られていたり、水性の染料などを使用していたりする場合があります。
また、量産楽器では乾燥が早く作業性や耐久性にすぐれる反面、バイオリンニスとしては少し硬めではありますがラッカーニスなども多く使われています。

極端な高温に注意!ニスが溶けてしまうかも

ニスは塗り重ねたのち、少し乾くのに時間を要します。溶媒となるアルコールが蒸発すると残った樹脂が定着してニスの層となります。
普通に楽器を保管、使用している場合にはそれほど神経質にならなくてもニスが悪くなったりはしません。特に注意すべきは夏場の気温が高い日です。

室温の高い部屋(30度をこえるような)に長時間放置しておく、またハードケースなどに入れて保管するさいに日光などでケースごと内部があったまってしまう状態には注意しましょう。
樹脂層はやわらかくなり、よれたり跡がついたりすることがあります。極端に高温になった場合には内部に細かい気泡が生じてしまいぶつぶつの模様が浮かび上がることもあります。(ニスが泡立つなどと言っています)

ケース内の保護材やアクセサリー、手ぬぐいなどが密着している状態もあまりよくないです。柔らかくなった時には跡がついてしまう原因となりえます。
理想はケースのふたを開けて机の上などに静置しておくことです。たまにケースを開けて取り出したり、演奏する方はそのままで問題ありません。

新作楽器はすこし丁寧に

イタリア製などの新作楽器でその年に作られたりしたものの場合には少し気を使って扱うようにしましょう。ニスが完全に乾くにはある程度長い期間が必要です。きれいに仕上がっているからこそ、傷や跡はとても目立ってしまいます。

表面に光沢があり美しく作られた楽器には”マスティック”とよばれる光沢のある樹脂が多く使われている場合があります。
そうしたニスはやわらかい性質をもつことがあるため、風通しのよい場所で保管して様子をみましょう。

肩当やパッドなどによってニスにあとがついてしまう場合

あご当てパッド

一枚目の写真はGel Restとよばれるものです。あご当ての表面に張り付けてクッションのように使います。小さいあご当てや分数楽器の場合にははみだしてしまうことがありますが、長期間楽器に接触しているとニスの表面を溶かしてしまうことがありますので注意しましょう。
必要に応じてはさみでカットするとGOODです!

二枚目はS式パッドよばれるものです。現在は生産が終了していますが楽器とあご当ての間にはさんで肩当のパッドとして使います。この商品は長期間つけていると劣化して楽器の表面に張り付いてしまうことがありました。

このようにゴムやウレタンスポンジパッドなどは経年で劣化し、化学変化や圧迫によって楽器に張り付くことがあります。むりやりはがしたりせずに専門店に相談しましょう。

肩当やあご当ての装着によって楽器のフチなどに跡がついてしまうのは、演奏上しかたのないことです。見た目にはそこまで気になるようなことはないとは思います。また多少であればニスに傷や跡がついても問題はなく、むしろ保護材としてのニスの役割をきちんと果たしていると考えることができます。
もしニスがおおきく削れて木を露出しているような場合には補修を行って木材を保護してあげましょう!

パッドを取り付けられている方へ!保管に関してのアドバイス

演奏のときにパッドを使用されている方は取り外しが面倒になってしまいつけっぱなしになることもあるかと思います。
しかし、楽器を長く使用するためにも毎回きちんと外してケースにしまうことが大切です。

パッドの内側にクッキングペーパーやマスキングテープ、養生テープを貼ることでもある程度防ぐことができます。

最後にニス補修のご相談に関して

ここまでニスの変化や保管方法について解説してきましたが、ニスが塗ってあるのは楽器の保護がおおきな目的の一つです。必要以上にニスに気を使ってしまい演奏が十分に上達しないのは非常にもったいないことです。

道具として使用している以上、傷などがつくことは避けることができません。お車の塗装や、ご自宅の外壁塗装と同じようにメンテナンスが必要なものとして考えていただければ幸いです。

表面の跡は磨くだけできれいになる可能性もあります。透明なニスを新しく塗って磨くことで段差や傷が目立たなくなるように補修することも可能です。
完全にニスが剥げてしまっても色を合わせながらニスの塗り直しを行うことで修理ができますのでまずはご相談ください。

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