バイオリン製作について③【横板(側板)の曲げ加工と接着編】
今回の記事ではバイオリンの横板(側板ということもあります)の曲げ加工と接着についてお話します。
バイオリンの形を決める大事な作業であり、また横板は音にも関係しています。
なれれば簡単ですが、初めて製作されるかたには難しい部分もあると思います。
目次
横板(側板)について
横板(側板)とはどのようなもの?
横板とは写真の赤い枠線に囲まれた部分です。楽器の本体を箱として考えたときに文字通り横の板となります。(わかりやすくするためにあえてコントラバスの写真を使用しています。バイオリンも同様の作りです。)
バイオリンでは1.1mm~1.3mmくらいが標準ですが、より薄い場合や厚い場合も考えられます。(チェロやコントラバスはサイズに合わせてより厚くなっています。)
薄すぎても強度的、音響的によくないと思われますし、厚いと質量が大きいために十分な楽器の振動を阻害してしまうこともあります。ちょうどよい厚みに仕上がっていることが重要です。
横板(側板)の材料
横板はこのように3枚一組で販売しています。(4枚一組などの場合もあります。)
選んだ裏板を参考に材料の杢(縦の縞模様)の幅や角度、雰囲気があっているものを選びましょう。
厚みは加工前で2mmくらいのものが良いでしょう。
杢は繊維のうねりなので、濃いものほど曲げも難しく削るのも難しくなります(繊維に刃が引っかかってしまう)
それも加味して初級者の方は厚いものを選ぶのが良いと考えます。
横板(側板)加工に使う道具
写真の一、二枚目西洋カンナという道具です。英語では”Block plane”といいますが鉄製のカンナです。
日本の木製のカンナと違うところは弾くのではなく押して使うという点です。
木材を非常に薄く削ることができ、小さな木片や木の小口なども削れるのはこの西洋カンナの大きな特徴の一つです。
僕の使用しているものは『STANLEY(スタンレー)』というアメリカの会社が販売している製品です。
製品の精度はお世辞にもいいとは言えませんが、とにかく価格が安いのが特徴です。会社自体はとても歴史の古い信頼のあるメーカーです。
他にもLie-Nielsen (リー・ニールセン)、Veritas(ベリタス)などのメーカーがあります。これらの製品はとても精度が高く製作されていますが高価です。
西洋がんなは台の接地面を削ってまっ平にして使用します。(道具を仕立てる必要があります)
僕の考えとしてはしっかりと仕立てを行うことが前提であるため、どんな道具を使っても同じだと考えています。
3枚目はスクレーパーという道具です。
板状の鋼材を用途に合わせて自由な形に加工し、平らに研いだのち目立てという作業を行って板のヘリに返しと呼ばれる爪のようなものを作って使用します。
つまりこの返しで木材の表面をひっかくようにして削りとるのです。
横板(側板)の加工作業について
厚みの削り調整
横板を平らな机や台の上に置いて、表裏を削って厚みを落としていきます。
西洋カンナやスクレーパーを用いて少しずつ削っていきます。このときに刃をしっかりと研ぎましょう(刃が杢にひっかかってめくってしまう事故を防ぎます)
金やすりや紙やすりで削ることも可能ですが、厚みを均一にすることは難しく、横板のヘリを削りすぎてしまったり、杢などの硬い部分がうまく削れなくてぼこぼこになったりするためかえって難しいです。あまりお勧めできません。
曲げ加工
この見出しの画像は『Wada Violin Design』様のホームページより引用させていただきました。引用元⇒http://www.ne.jp/asahi/wadaviolin/design/503gawaita.html
曲げ加工時の写真を撮り忘れていたためすみません🙏ちゃんとした写真を撮って差し替えます。
使用している横板を曲げる道具を”ベンディング アイロン”と言います。
バイオリンを始めとする弦楽器の横板の加工に使う専門工具です。(買うと3万円くらいします)
自作することもできます。(写真の3枚目、はんだごてに”ザルボ”という水道管のパーツを通したもの)
板を水に十分に漬けて柔らかくします(5分くらい)
その後、アイロンに押し付けるようにして曲げます。一気に曲げると割れてしまうため注意です。
内型とブロックの形に合わせて調整していきます。
外周すべての横板を曲げて製作します。
接着作業
内型に取り付けたブロック(コーナー)はテンプレートを合わせて線を引き、あらかじめ削って加工しておきます。
C字の部分の横板を先に取り付けます。
これも写真がなくてすみませんが😅
台形の当て木というものを作製して横板を押し込むような形で接着します。
その後、さらに上下の横板を接着するためにC字の横板の先を画像のように斜めにカットします。
残りの横板を接着して完成です。この時にもカーブの形に合わせた当て木が必要になります。