バイオリン弓のチップ交換の方法について

こんにちわ皆さん
今回はバイオリンの弓のチップ交換の方法についてお話します。
チップは弓先に毛を取り付ける際に木が割れてしまうのを防ぎ、ぶつけたりした際にも弓の損傷を防ぐ役割があります。また美観的にも美しいですね。
時代とともに改良され、弓全体の音色をより均一にするため、反りや毛の量を増やすなどの進化を遂げたモダン弓に対してバロック弓などでは毛の量が少ないためにこのチップはとりつけられていませんでした。
そんなチップは装飾とも考えられますが基本的には消耗品として定期的な交換が必要となります。
交換方法や材質の種類などとともに見ていきましょう!
目次
チップはどんな構造?
この写真は僕が以前交換をしたコントラバス弓のチップです。バイオリン・ビオラ・チェロ・コントラバスのチップは大きさは違えども基本的な形は一緒です。
写真2枚目を見てください。弓の棹の先端にはヘッドと呼ばれる膨らんだ部分があり、その下に黒い部分とチップが張り付いています。
サイドはヘッドのカーブに合わせて削られており、先端は将棋の駒のような形になっています。(先端の形状にはいろいろあり、丸くとがらせてあるものもあります。)
毛が入る部分には台形の穴が開いています。
チップには様々な素材のものがあり、オーソドックスなものではプラスチックや象牙、牛骨などがあり、他にも人造象牙(樹脂製)やマンモスの牙なんてものもあります。
また最近は技術も発達してきて、加工しやすく丈夫で軽い素材のチップが数多くあります。
僕の工房でも繊維を格子状に組んで割れにくくした”チップアーマー”や硬い素材の”エルフォリン”などを取り扱っています。
弓のチップが破損したら交換しよう!
チップは壊れない限りは交換する必要はありません。またそんなに簡単に壊れることもありませんがやはり樹脂製のチップは当然経年で劣化しますのでいつかはお別れの時が訪れます。
交換は簡単に行えますのでまずはご相談ください。
チップを裏から見てみましょう!
画像のように台形の穴にみっちりと毛束とくさびが入っています。くさびによって毛は留まっているのですが、当然反対側の木とチップには圧力がかかっています。またサイドにも若干圧力がかかる形になります。
チップが古くなると横の細い部分や繊維にそって縦に割れたりします。
また演奏中にふいに何かに弓先をぶつけたときに先っちょが割れることがあります。先だけならば破片を見つけて張り付ければ使用上問題ありません。状態によっては新しいプラ板を足すこともできます。
バイオリン弓のチップ交換方法
状態確認
修理の基本ですが、まずはオリジナルの状態を確認しましょう!
これは店舗の貸し出し用に中古弓のチップを新しく交換するところです。チップは破損はしていませんでした。
古い弓の場合、製作者の特有の形というものがある場合がありますのでなるべくオリジナルチップの形状を尊重しながらきれいな仕上がりを目指します。
ボロボロだったり量産弓などの場合はなるべくまとまったきれいな形状を目指します。
毛と古い楔を取り除く
”ピンバイス”と呼ばれる細いドリルを使って楔の中央に穴をあけます。これにより圧力の抜けた楔は外れやすくなるのです。
千枚通しのようなとがった針でほじっても取れなくはないですが、弓に不要な圧力がかかるためオススメできません。
その後残ったカスをナイフなどでキレイに除去します。たまにくさびがボンドでつけられていることがありますのでそれもきれいにしておきます。
黒いシートの接着
この黒いシート(正式な名前がわからずすみません(笑))ですが、素材がいろいろあります。
高級な弓ですと伝統的な薄い黒檀が張り付けられています。ほかにもプラスチックやカーボンシートなども使用されます。
今回はプラです。裏面の形に合わせて調整をして接着剤で張り付けます。この後チップをつけることになるのですがこの時点である程度ざっくりと形を整えといた方がのちの作業はやりやすいです。
先端とサイドを削り、下穴もあけておくと良いでしょう。
チップの張り付けと成型
今回使用するのはプラスチックのチップです。いろんな素材のチップを写真に撮ろうと思いましたが白いため見分けがつかず断念しました😅
チップを張り付けたのち成型し、裏面の台形の穴の形に合わせてナイフできれいに仕上げたら完成です。
サイドや先端もノミやナイフを使って丁寧に削ります。(ニスを削ってしまわぬように注意です)
最後の仕上げはよく切れる鉄やすりでさっと薄く削るのがいいでしょう。
表面を磨いてピカピカにしたら完成です。