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ナットが原因の雑音について ~症状と修理方法を解説します~



こんにちわ!下川バイオリン工房です。

”ナット”というのは写真の弦が乗っている黒いパーツのことです。糸巻から伸びた弦がナットの溝に沿って並べられ、駒まで引っ張られていきます。

ナットは通常”黒檀”という木で作られています。楽器の演奏性にかかわるパーツのひとつです。今回の記事ではナットの状態悪化によっておこる雑音の原因とそれぞれの解決方法についてお話します。

 

ナットは消耗品です。どんな楽器であってもいずれは交換が必要な時期がやってくるということを知っておいてください。そのためナットの調整や修理は手軽に安価に行うことができるので、それほど不安に思う必要はありません。

目次

ナットの構造と演奏性への影響

ナットは写真の青丸で囲まれたパーツです。丸く仕上げて弦を沿わせるようにのせます。弦の高さと幅、方向を決めるパーツです。

このナットを調整することでいろいろなことが変わります。
例えば握力が弱い人であれば、ナットの高さを低くして指板と弦のスキマを狭くすることで抑えやすく鳴ったり、指が太くて隣の弦に引っかかってしまう場合は幅を広くしたり、逆に狭くして移弦をしやすくしたりなどです。

手軽に調整できて、効果を実感しやすいパーツなので専門店への相談をお勧めします。

ナットが原因の雑音の種類と修理方法について

ナットの溝が摩耗した場合、きれいに作られていない場合

ナットの溝は演奏による弦の振動やチューニングなどによって削れて行きます。特に弦が振動し始めるナットのはしっこはどうしても削れやすいものです。
また、残念なことですが量産楽器の一部のものはこの溝がきれいに仕上がっておらず雑音が出てしまっているのを見かけることもあります。

写真で分かるようにはしっこがその手前よりも下がっていることで弦が振動を始める位置がずれていきます。するとナット自体に弦がふれてしまい雑音となります。

この場合の解決方法は単純で溝が滑らかになるように削りなおすことです。この修理代金については当工房ではいただいておりません。
プラスして後述するような修理を行う場合のみ費用が発生します。

ナットの溝が深く埋もれてしまった場合

ナットを正面から見たときの図です。青い丸の部部に注目してみます。

溝が削れて深くなると弦が埋もれたような状態になります。この状態では弦の脇を固める壁の部分に振動した弦がふれあい、雑音となります。
またこの症状では弦の振動を止めてしまう場合も考えられ、音の響きが悪うなったりします。

この場合にはナットの表面を削り直して、弦を表面に出してあげる修理を行います。(通常弦の1/3~1/2くらいが埋まっていればOKです。)
修理代金は1,500円です。時間にして30分くらいでしょうか。

ナットの溝が深くなりすぎて指板に接触する場合

これはナット削れの最終状態といえます。
溝が深くなりすぎた結果、指板の端と接触してしまう状態です。これにより雑音が発生します。
また、掘っておくとどんどん指板も削れてしまうため早めの修理をお勧めします。

修理方法はナット上げと呼ばれるナットを一度取り外して下に薄い板を敷き、高さをかせぐ方法があります。(修理代2,000 時間30分~1時間)
もしくはナット交換を行います。(費用5,000円 修理時間1時間~2時間)

これらの修理を行う際には溝の高さを高くすることはもちろん、それぞれの弦の幅を調整することが可能になります。

最後に

次回は指板について話せればと思います。

これまで何度か修理に関する記事を書いてきました。修理代や修理時間などをお知らせすることで演奏者の皆さんに修理を身近に感じていただければ幸いです。
詳細な修理代については下部のリンクをどうぞ

下川バイオリン工房では理想の演奏環境とは演奏者と指導する先生、修理店が相互に協力しあえることだと考えています。

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