バイオリン弓のネジが回らない・毛を張れないなどの症状には
明けましておめでとうございます。下川バイオリン工房です。店舗の移転作業に追われて更新がなくなっておりました🙇
2022年最初の記事は弓のネジに関するトラブルの解決方法と原因についてです。
弓のネジはシンプルな構造でありながらも様々な不具合のパターンが起こり得ます。当工房ではお客様の感覚や日々お使いになる際の弓の状態に関するお話をもとに点検を行い、原因を特定していきます。
今回の記事では『ネジが固くて回らない』という場合と『ネジは回るけど毛が張れない』の2パターンにフォーカスしてお話させていただくことにします🙌
目次
- ○ バイオリンの弓の各部名称について
- ・内部の様子
- ○ バイオリン弓の毛を張る仕組み
- ○ ネジが固くて回らない場合について
- ・解決方法
- ○ ネジが回るけど張れないという場合
- ・解決方法
- ○ 最後に
バイオリンの弓の各部名称について
まず説明をする前に名称について軽く説明します。
本当は細かくパーツごとに名称があるのですが、図がごっちゃになってしまうので省略します🙇
大きく分けると黒いパーツ”毛箱(フロッグ)” ※こちらは黒檀製(安価なモデルはプラ製、めずらしいものだとべっ甲や象牙、スネイクウッドなどもあります)
棹(スティック) ※ペルナンブコという木で出来ています。
ネジ(スクリュー)
さらにフロッグに取り付けられた真鍮製の小ねじを”メネジ(雌ネジ)”と言い、スクリュー側を”オネジ(雄ネジ)”といってこの二つはかみ合うように対になっています。
内部の様子
メネジの中にオネジが通ってかみ合った状態になっています。
棹(棒の部分)に開けられた二つの穴からそれぞれネジが伸びているため、かみ合った状態でフロッグが外れることはありません。
バイオリン弓の毛を張る仕組み
スクリューネジを手で回すとネジ山に沿ってメネジおよびフロッグが移動します。
フロッグに取り付けられた毛が引っ張られることで張ることが出来るのです。
メネジが稼働する範囲であればいくらでも張ることができるので注意が必要です🤔
ネジが固くて回らない場合について
主に二つのパターンが考えられます。
①ネジが錆(サビ)付いてしまっている場合
材質にもよりますが、内部に湿気や汗などが入り込んで腐食し、さびが出てしまうことがあります。
【図の②】サビは材料同士(メネジ、オネジ)をくっつけてしまったり、【図の①】木の穴の中で増えて詰まってしまったり、【図の③】フロッグが棹にくっついてしまったりして外れなくなります。
②毛が伸びきってしまい、調節の限界に達している
ネジの稼働範囲には限界がありますので、毛がビロンビロンになっているとネジをいくら回しても張れなくなります。やがて限界に達すると棹に引っかかってネジは回らなくなります。
解決方法
①潤滑油や石鹸水などを使ってサビを緩めたのちに、ネジを回してみたり、揺らしてみたりして様子を見ましょう。
オネジやメネジは数百円~数千円で買える安価なものですし、壊れても交換できるので安心してください。
頑張ってもまったく動かない場合には万力などで固定してペンチで無理やり回すほかない場合もあります。棹が割れる危険性を伴いますがこれが最終手段となります。
②毛替えをしましょう。張り直しなどは考えずに、毛が伸びている時点で状態は悪いので迷わずに毛替えをしましょう😊
ネジが回るけど張れないという場合
毛を張っている間、ネジは青矢印の方向に常に力をうけています。
この状態でネジを緩めたり、締めたりしているとネジはだんだん消耗していき、最終的にはネジ山が切れてなくなってしまいます。
基本的には黄色いメネジの方が真鍮製などの柔らかい金属のため、先に壊れます。(これはこちらの方が交換しやすいためにあえてそうしてあります)
ネジ山が切れれば当然かみ合わないのでフロッグは動かなくなります😭
解決方法
ネジの交換を行う必要があります。
修理代は以下のようになっております。
メネジの交換は1000円(パーツ代込み)
オネジの交換は2000円(パーツ代込み)※オネジの場合は内部で折れたりした場合には別途作業工賃がかかる可能性があります。また5000円~10000円などの銀製のパーツへの交換の場合は不足分のパーツ代をいただきます。
作業時間はパーツ在庫があれば数十分で完了いたします。
ない場合は取り寄せとなりますのでご了承ください。
最後に
サイト上には毛替えの料金しか書いていませんが、革巻きやラッピング(銀の巻き線)の交換なども可能ですので弓の修理に関してもご相談ください。
弓のネジの調整などについては他にもさまざまな要素がありますのでいずれ実例を用いながらご説明できればと思っています。