バイオリン観察日記【横板修理・ダブリング】~匠の修理見つけちゃいました~
こんにちわ
今回はチェロについてです。当店で行った修理ではありませんが、腕の良い職人さんが修理した痕跡を発見したので記事を書いています。
ダブリングと呼ばれる横板が割れてしまったときに行う補修方法です。僕自身バイオリンでは何度か行っていますが、チェロではまだ実績が無いため、貴重な情報を得ることが出来ました。
目次
ダブリングはどのような状態の時に行われるのか?
横板は横向きに年輪が走るように切り出しております。そのため横方向の引っ張りに強く、バイオリンやチェロなどの特徴的なラインを作り出すための曲げ加工を行う際にも割れることがないのです。
しかし良いことばかりではなく、乾燥や衝撃などによって年輪に沿って木が割れてしまうことがあります。コントラバスやチェロなどでは特に多い修理と言えるでしょう。
時には写真のように同じ個所に複数の割れが重なることや割れがつながって複雑になることもあります。
通常の補強修理を行う場合
割れのスキマに接着剤(ニカワ)を流し込んで接着を行い、その後補強のために木の小さな破片を張り付けていきます。
絆創膏のような形で広がりを防ぐのです。
しかしもともとバラバラに近い状態の物がかろうじて接着されている状態。気休めの補強をしても形を保つのは大変です。
いつか横板の崩壊をまねいてしまうかもしれません😅
ダブリング修理の場合
古い横板の裏側に新しい木を一面に貼り付けます。
これを行うことでまるで新しい横板に交換した時のような強度を得ることが出来ます。
当然あたらしい木は割れておりませんので崩壊の心配は去ったというわけです。😊
ダブリング修理の方法
オリジナルの横板を薄く削ります。新しい木を張り付けたときに厚みも二倍になっては困ります(音響的にも、加工しやすさ的にも)ので、表面のニスと木を薄皮一枚残して削っていきます。
この時、削っている際にちぎれたりしては元も子もないので、表面に養生テープもしくは絹などの布を張り付けます。
新しい横板はあらかじめ曲げておきます。
また横板のカーブに合わせて当て型を作るのを忘れない様にします。
ニカワを塗りこみ、新しい木を張り合わせます。内側は布袋に砂を詰めたものを用意(全体を均一に圧迫したいため)、外側には当て型をセットしてクランプで締めましょう!
※ニカワが密閉されており、乾くのに時間がかかるので注意!
最後に完成した様子
楽器の一番外側が古い横板(オリジナル)
そのうち側の少し白い部分が新しい横板
さらに内側がライニングと呼ばれる補強材(接着面を確保するため)です。
外側からは全く分かりませんが内側からは木目が違うためにすぐわかります。