BLOGWorkshop note 工房手記

ブログ

バイオリンのブッシング修理とは?(ペグ穴埋め交換)方法と必要となるパターンを解説



みなさんこんにちわ。下川バイオリン工房です。

久しぶりの投稿となりますが、今回はブッシング交換修理について解説したいと思います。

”ブッシング”と聞いてもなんのことかわからないと思います。簡単に言うとペグの穴埋め修理のことですが、弦楽器修理店ではブッシングと言っています。

大掛かりに感じるかもしれませんが割と簡単で一般的に行われる修理の一つです。

 



全然関係ないですが、日本百名城の一つ会津若松の”鶴ヶ城”の写真を載せます😊

いい写真が取れたものですから(笑)

目次

ブッシングとはどんな修理?

”ブッシング”とは円筒形・管状の部品などのことを指すそうでバイオリン修理においてなぜこのように呼ぶようになったのかは僕にはわかりません。
修理には写真のようなブッシング材を使用します。

ブッシング材は主にツゲやメープルが使用されます。硬い木であればなんでもできるとは思いますがこれ以外の素材は使用したことがありません。
もとのネックがメープルなのでメープル材を使用した方がなじみはいいようですが、ツゲの方が堅く繊維も詰まっているため仕上がりはなめらかで丈夫です。

穴を一度埋めてから、またドリルなどを使ってあけ直します。

どのような場合にこの修理が必要になるのか

パターンごとに分けて見てみましょう!

弦が接触してしまうパターン

ひとつめは画像1・2枚目に示しました”弦が接触してしまうパターン”です。
ペグボックスに真ん中に素直に穴をあけた場合、2番線(A線)が3番線(D線)のペグに接触してしまうことがあります。 ※もしくは2・3番線が1番線(E線)のペグに接触
チューニングが狂いやすく、またA線は常に押された状態となるため負担がかかりやすくなります。

実際は2番線(A線)ペグはもう少し手前に、3番線(D線)ペグはもう少し奥に穴をあけています。
一見完璧なデザインのように見えるバイオリンですが、この部分に関しては多少の無理があります。不思議なことですね😅

ペグ穴が大きくなっているパターン

長年ペグを回したり、押し込んだりすることで木が摩耗して穴が広がっていくことです。
またペグ交換の際に穴をきれいにするために薄く削ることがあります。その積み重ねでも広がっていきます。

穴が大きいということはペグも太いということです。ペグが太いと巻き数が少なくなり、チューニングがしずらくなる上、回しにくくなったりもします。

またペグが短くなっていくことも美観を損ねているうえ、弦を通す穴の位置の問題や使いにくさなどの問題を発生させてしまいます。
ペグを交換するだけで対処できれば良いですが、一度埋めることで多くの問題を解決できる場合があるのでしっかりと楽器の状態を確認して考えましょう。

割れが発生している場合

最後に割れを補強するのに使うパターンです。
木の繊維の方向や力のかかり方などの関係でどうしてもペグ穴周辺は割れやすいです。
ブッシングの輪っかがペグの周りにかかるように削ることで割れに直接力がかかってしまうのを防げます。

これは応急処置的な部分もあるため長く使うのであればしっかりとした修理をお勧めします。(フランクフェイシングなど)

修理方法について

穴をきれいに削る

”リーマー”という専門道具を使ってペグ穴を薄く削り直しきれいにします。
あとでブッシング材を接着穴埋めする際に、汚れや段差があるとキレイにくっつかないためです。

リーマーには規格にはいくつか種類があり、分数バイオリン用・フルサイズバイオリン用・ビオラ・チェロ用などの種類ごとの他に”テーパー比”と呼ばれる先端と根元の太さの比率に関する区別があります。※詳しくはここでは書きませんが1:30、1:20の二種類があります。

コルク栓抜きのように穴に差し込んで回すだけです。

穴をブッシング材で埋める。

”シェーパー”という道具でブッシング材を削ります。鉛筆削りのように差し込んで回すだけです。

穴を一つ一つ埋めていき、出っ張った部分は細工のこぎりやノミで削り取ります。
この時にペグボックスに傷をつけないように注意します。

ニスを塗り直してきれいに色を付けたら完成です。※目止めがしっかりしてください。色をいきなり塗ると木口面なのでシミになります。

改めて穴をあける。

ドリルを使って穴をあけ直します。※4つの穴の位置や距離間隔などについては話が長くなるため、別の記事で書きます。
4ミリくらいの穴あけてから、分数リーマー、フルバイオリンリーマーの順に使うと作業がしやすいです。

角度には注意が必要です。
その後、ペグを削って取り付ければ完成です。

このあたりの工程については注意点が多いため、別の記事で書けたらいいなと思っています。

その他のブッシングについて

継ネックの際のブッシング

継ネック修理の際にペグボックスの壁を薄く削る前ににブッシングを行います。
理由としては穴が開いたままだと平面に削るのが難しくなることと、穴の周りの強度が弱いために万が一の事故は起こらないようにするため、
また継ネック後にペグ穴をあけ直す際に古い穴と寸分違わずに開けることが難しいなどがあります。

エンドピンブッシング

エンドピンもペグと同様に穴が大きくなったりすると穴埋めをします。
写真はコントラバスのものですが、バイオリンも同様の手順で行います。

エンドピンはペグよりもさらに強く力がかかっている(4弦すべての力)ためピンがひっぱられて抜けてきたりします。
チェロやコントラバスなどの演奏に係るタイプのエンドピンの場合は角度などもシビアに考えていく必要があるため、割と行う可能性が高い修理と言えるのではないでしょうか。

スパイラルブッシング

写真がなくすみません😅

カンナなどで薄く削った木のシートのようなものを棒に巻いてペグ穴の内側に貼り付けるブッシング方法です。
手軽に穴を小さくでき、意外と強度もありますが、本式のブッシングには劣ります。

簡易的な方法と思ってください🤔

特殊なブッシング方法について

ブッシング材は木を立てに切ったようにして作ります。※割りばしと同じ感じです。
このようにしないと丸く製材した際に折れてしまうと思うので仕方ないです。

対してバイオリンのネック材は画像のようにスクロール側と指板が側が小口になるように作ります。
そのためブッシング材とネックの木口は交差するかたちとなります。
この時に問題となるのはニス塗装をしたときにどうしても見た目の違和感を消すことが出来ず、ブッシング材が埋まっている部分が丸く残っているのが目立ってしまう点です。

そこでブッシング材の先っちょにネックと同じ向きの木材を張り付けて一緒に削り、接着面がちょうどペグボックスの壁の中に納まるようにします。
これによって強度ど表面の美観を両立することが出来ます。

但しこれをすべての穴に対して行うのですから相当な時間と手間がかかります。
また元のネックの材料に合った色や年輪メープルを探し出さないと意味がないため、この方法は機能的な回復修理というよりは復元に近い修理となります。
相当な高級楽器において行われることがあるでしょう😊

SHAREシェアする

ブログ一覧

HOME > BLOG > バイオリンのブッシング修理とは?(ペグ穴埋め交換)方法と必要となるパターンを解説

〒125-0063
東京都葛飾区白鳥4丁目22-13

© 2020 下川バイオリン工房