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バイオリン横板のカットダウン修理について



皆さんこんにちわ!下川バイオリン工房です。

寸法を短くする修理のことを”カットダウン”と言います。表板・裏板の大きさが理想やネックの長さが理想とされるサイズよりも大きく、楽器や弦の調整に支障が出ている場合。経年の乾燥などによって横板の長さが表板などに対して相対的に長くなってしまった場合などに行う修理が一般的です。

今回紹介するのは横板の高さを下げるための”カットダウン”修理です。まず読者の方々にお伝えしたいことがあります・・・

①この修理はほとんどの楽器に必要ないものであり、ほとんど行われることがないため修理の知識としてはあまり必要がないです😭(笑)

②今回の方法が絶対ではないので一例としてお話します。

それではまいりましょう!

目次

今回修理の対象となる楽器とその問題点について

まず写真をお見せします。この段階で違和感に気づける方はとても良く楽器を観察されていると思います。
ちなみにサイズは1/4です。

状態と問題点について

横板の高さ(表板から裏板までの幅)32mmあります。大人用のモダンバイオリンが30~32mmほどだと考えるとこの楽器の異質さがわかると思います。
写真一枚目は4/4との比較写真です。同じ幅です。
通常の1/4サイズのバイオリンは26~27mmほどですので6mmも高いことになります。比較写真はスズキバイオリンの1/4です。

これによっておこることは子供が演奏する際に首の長さが足りないことです。構える姿勢が悪くなる場合や、楽器の安定性に欠くために演奏性を損なう恐れがあります。😱
また、近年は分数バイオリンでも肩当を装着すると思いますのでもう物理的に挟めないという問題もあります。

国によって子供の平均的な首の長さがことなると思うので、これが使えないほどのサイズではないことがこの楽器があることからもわかります。

修理方法について

裏板オープン

今回は裏板を開けます。ネックの入れ直しが必要な場合や表板の割れ修理などがある場合には二度手間になってしまうので表板側を開けて削っても良いでしょう。
今回は裏板オープン➡横板削り➡箱とじ(ネックの角度が変わらない様に注意しながら) という流れで進めていきます。

まずはカットしたあとの仕上がりの高さにマスキングテープであたりをつけます。

横板のカット

”罫引き(けひき)”※という道具を使用します。横板に沿って一定の幅で切れ込みを入れていきます。
深く刃を入れることで手でパキッと割ることが出来ます。写真四枚目のように結構きれいな切り口となりますが接着前にはかんなで切れに削ります。

写真三枚目のように”ブロック”の部分は折れるほどやわではないため残すことになります。

ブロックのカット

鋸で切ります。その後、かんなで整えて平らにします。
ネックの部分はネックとブロックを両方削らないといけないため歪みに注意が必要です。
よく切れるカンナを用意しましょう!🙌

ライニングの取り付け

ライニングはスプルースです。
制作の場合と同様にアイロンで横板に沿って曲げて接着をします。ナイフなどを使用して裏板接着面とは逆側を削って薄くします。
これはライニングの質量を落とすことで楽器を軽くし、振動が吸収されて音が悪くなるのを防ぎ、またはがれにくくするためです。
ライニングの取り付け方法についてはまた別の記事にて詳しく紹介したいと思います。

染料を塗りこんで古く見せることがありますが今回はコーヒーで軽めに色付けをしました。(外側からは見えないパーツの為)
その後裏板を取り付けて完了となります。

登場した専門用語について

罫引き

けひき、けびき、けいびきなどと言い。木材の側面に対して表面の特定の位置に均等な幅で印をつけるための道具です。
定規となる板に、細い棹を差し込み、この棹の先に線を罫書く罫引刃を取り付けた道具です。板の側面を沿って、定規板を滑らすことによって棹の先の罫引刃が表面に線をしるします。

<画像2枚目は『コトバンク』より引用させていただきました➡https://kotobank.jp/word/%E7%BD%AB%E5%BC%95%E3%81%8D-489187>

終わりに

サイズ的には分数バイオリンでありながら、あきらかに厚みがフルサイズバイオリンと同等くらいある楽器は”分数ビオラ”の可能性があります。
海外の分数バイオリンの基準(寸法表)からはずれたサイズの楽器は数多く存在しますが、あまりにもネックの長さや本体の長さが違うものはその可能性を示しているのかもしれません。
日本では分数ビオラを見かけることはほぼなく、店頭で弦を見かけることやメーカーカタログにも楽器本体や弦が記載されていないことからあまり一般的ではないと思われます。

今回の修理に関しては分数ビオラであるかどうかが判別できない点や結果的に子供が演奏できるかどうかなどを考えると間違ってはいない判断なのではないかと考えられます。

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