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バイオリン製作について⑥【ネック製作編】



今回の記事ではバイオリンのネックの製作についてお話します。

ネックの製作工程は材料の幅や指板接着面の成型から始まり、型を用いて図面を引き、切り抜き、そしてスクロールおよびペグボックスの荒堀、仕上げと続いていきます。糸巻(ペグ)の取り付けに関してはニスを塗って完成していから行うため、今回は書いていません。

ネックもバイオリンらしさを表現する重要なパーツであり、職人の木工の腕が試される部分でもあります。それでは順にみていきましょう!

目次

ネックの形状(スクロール)について

図形が最も美しく見える寸法の比率に”黄金比率”というものがあります。
1:1.618で表せられる図形のひとつに画像の”黄金螺旋”というものがあります。

先の比率で作った長方形の一方に正方形を作り、対角を曲線でつなぎます。残った長方形の一方に同じように正方形を作り曲線で結びます。
これを繰り返すと螺旋模様が描けます。
このような螺旋模様はオウムガイの殻やヒマワリの種、台風の雲の渦など自然界にも多く見ることができ、自然界の造形美と言われています。

ヨーロッパではこのような螺旋構造を美しいとする文化があり、建築様式(螺旋階段や装飾)、衣裳や髪型、金管楽器の渦巻きなどあらゆるところにみることができます。バイオリンのスクロールもこうした文化から生まれたのではないかとする説があります。

ネックの材料について

ネックの材料は裏板・横板と同じメープルです。ネックの根元からスクロールまで一つの木材から削りだします。
材料の木取は小口がスクロールの先端とネックの根元にくるように

写真で見比べるとわかりますが、ネックの形状・幅の都合上、このくらいのサイズの材料から取り出せるネックは一本です。
残った木材は捨ててしまうわけではないですが、なにか別の用途に使用します。

ネックの加工作業について

ネックの加工作業は材料の形を整えることから始まります。のこぎりやノミ、スクレーパー、丸のみや豆かんななど様々な道具を使用します。
特に切り出しの際にはバンドソーと呼ばれる機械式ののこぎりや電動糸のこぎりなどがない大変な作業になるかもしれません。

材料の下準備(成型)

まさかの材料を最初に削るときの写真が一枚もなくてすみません💦 いずれアップしますので今回は想像でお楽しみください。

まずは指板を接着する面をかんなで平面に仕上げます。このとき仕上げる面にたいして木目が平行に走っているのが理想ですが、材料によっては修正が不可能な場合がありますのでむりなさらぬように

その後、材料の側面を指板面と直角になるように削って幅を整えます。スクロール渦巻の中心が一番幅が広いのですが、この幅まで削る必要があります。私は40~42mmほどにしています。

型を用いた切り抜き

写真のような型を使用します。ネックを横から見たときの形状になっています。
またスクロールの螺旋部分は穴があけてあり、針でつついて跡をつけておきます。

この型の指板の面と材料の指板の面をぴたりと合わせて、線を引きます。(スコヤなどを使って反対側の同じ位置にも線を引きます。)
その後、バンドソーなどで切り抜きます。

ネック外形の削り作業

まずネックの外側の輪郭を決めていきます。
外丸のみや豆カンナ、ノミややすりを使って形を整えます。先に引いた線まで削っていきますが、最後は必ず目で見て美しい曲線になっていることを確認しましょう。

スクロールの荒堀り

ネックのペグボックスから先は部分ごとに細かく横幅の寸法を決めています。
渦巻を順番にのこぎりでざっくりと切り取ってはノミなどで仕上げて寸法にしていく、また先へ進めていくを繰り返し、螺旋の先端を目指します。

こちらも外形と同じように寸法は決まっていても必ず目で見てきれいになっているか確認するようにしてください。ラインのつながりは美しく流れているか、螺旋はきれいに描けているか、左右の対称は取れているかなどです。

ペグボックスを掘る

スクロールがある程度できたら、ボックスの内部を掘ります。
ノミで掘っていくと大変であるため、壷切と呼ばれる丸の深いノミでえぐるように掘るか、ドリルである程度削ってしまうと簡単です。(貫通しないように注意!)

ボックスの横壁は薄くしすぎないように注意が必要です。4mmくらいはあった方がよいでしょう。

裏の溝を掘る

丸ノミやナイフを巧みに操って溝を掘っていきます。この部分はサンドペーパーをかけにくいので、この時点である程度まできれいに表面を仕上げてしまうことをお勧めします。

面をとる

スクロールの角は今の時点ではとがっている状態です。
これをやすりなどを使って取っていきます。写真のように全体に1mm程度の角が取れて完成です。

最後は指板を製作して仮付けします。指板の作り方についてはまた別の修理記事にて書きたいと思います。
その状態でペグボックスの付け根の部分(私はあごと呼んでいます笑、逆に本体側の付け根が首です)

ネック入れ→ボタン成型

ネックを本体に接着して、ボタンと呼ばれる裏板との接着部分を成型します。
横幅は21~22mmくらい、高さはフチから12~13mm(はかりづらいですが)くらいにするとバランスが良いです。

ネックの入れ方についてはネックリセットの記事へのリンクを下部に張ってありますので参考にしてください。

最後に

かなり駆け足でここまで来てしまいました😅
今後また製作する際にはもっと詳しく解説をしていきたいと思います。

ここから先はニス塗についてです。ここまで読んでいただいてありがとうございます。
ニス塗については僕自身特別なこだわりはなく、基本にそって丁寧に塗ってあればあとは楽器の仕上がりが良しあしが決まると思っています。
秘密の技とかはないのであまり期待しすぎないで下さい😅

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